素数の魔力に囚われた人々〜リーマン予想天才たちの150年の闘い

15日に、NHKで「NHKスペシャル」という番組があったのだが、チェックしていなかったので後半15分ぐらいしか見られなかった。面白そうだったので再放送を待つか…と思ったら、BShiで21日に再編集版(完全版?)の「ハイビジョン特集 素数の魔力に囚われた人々〜リーマン予想天才たちの150年の闘い」があったので見た。
リーマンゼータに関しては前からけっこう興味があった(といってもwikipedia:リーマンゼータ関数を読む程度)。ゼータ関数は、
\LARGE \zeta (s) = { 1 \over {1^s}} + { 1 \over {2^s}} + { 1 \over {3^s}} + { 1 \over {4^s}} + { 1 \over {5^s}} + \cdots
という定義がいちばんシンプルでわかりやすいと思うのだが、これでは素数が出てこないので、番組では最初からオイラー積の形の表示
\LARGE \zeta (s) = { 2^s \over {2^s - 1}} \times { 3^s \over {3^s - 1}} \times { 5^s \over {5^s - 1}} \times { 7^s \over {7^s - 1}} \times { 11^s \over {11^s - 1}} \times \cdots
のみを紹介している。そもそも上の式を下の式に書き換えられることを発見したオイラーがすごすぎる! しかも式変形の手順はかけ算の分配法則ぐらい知っておけば理解できる(厳密なところを除く→wikipedia:リーマンゼータ関数#オイラー積)。まさにこういうのがコロンブスの卵。これを初めて知ったとき、まさか解析的な関数と素数がこんな形でつながるとはと、ちょっと感動した覚えがある。
そしてその例として s = 2 のときの式が登場。
\LARGE \zeta (2) = { 2^2 \over {2^2 - 1}} \times { 3^2 \over {3^2 - 1}} \times { 5^2 \over {5^2 - 1}} \times { 7^2 \over {7^2 - 1}} \times { 11^2 \over {11^2 - 1}} \times \cdots = {\pi^2 \over 6}
これを求める計算手法も鮮やかすぎて鳥肌が立つぐらいなのだが(→wikipedia:バーゼル問題)、この計算自体にはオイラー積(素数の表示)は使わないので、「素数とπがつながった」というよりは、「自然数とπ」がつながった、という印象のほうが僕には強かった。実際πを求める級数三角関数関係のものでたくさんあるので、そんなに特別とも思わない。が、いずれにしても素数とのつながりが発見できたといえるわけで、それから素数定理などに発展していく。
後半で、「リーマン予想が解かれれば暗号が破られる」というような展開を挟んでいたがそれにはちょっと疑問を覚える。リーマン予想はあくまでYESかNOかが決まる問題で、たとえYESでも即座に素数の規則が全部明らかになるわけじゃない。リーマン予想がそれだけ直接影響を及ぼすものなら、リーマン予想がYESであると仮定して理論を組み立てていけばいい。もし合ってればそれで暗号が破れてしまう。実際番組でも触れていたように、多くの数学者はリーマン予想が正しいと思っているし正しいと仮定したらどうなるかの研究もしている。そしてもちろんリーマン予想が正しくても破れない(相当困難な)暗号を開発して使っている。ただし、暗号技術に素数が使われているというのは厳然たる事実で、そのことはもっと強調しても足りないぐらいだと思った。
最後に素粒子との関係。これは量子物理も幾何学もよく知らないので単純におお、すごいと思って見ていた。量子力学とか興味はあるんだけど、入り口でまず基本の数学的知識がきっちり要求されるのが厳しい。
全体を通してとてもおもしろい番組だった。はっきり言ってテレビで数学が取り上げられることなんかほとんどなくて(難読漢字クイズとかさんざん出てくるのに)、しかも未解決問題というのは現代数学の最先端の話になってしまうので、構成がかなり難しくなるはずなんだけど、そのへんをCGとかを使って少しでもわかりやすく仕上げようという制作者の意気込みが感じられてとてもよかった。

ちなみに、今日ポアンカレ予想の特集の再放送もあったんだけど、途中で居眠りしてしまってちゃんと見れませんでした…。リーマン予想と併せてまた再放送があるみたいなのでまた見ます…。